2008年02月09日

マツ・スギ・ヒノキ・ザツの不幸

ナイショ
基本的な質問ですが、「香川の森の問題」というのはなんですか?
そして、そこで、森林ボランティアはどのように関わることが大事ですか?
高知みたいに、経済林としてなりたつ施策をするほど大きなお山ないし・・・・
植えるとこないし・・・・・

ナイショ


 例えば,色んな「勘違い」や「誤解」や・・・時には「欺瞞」が世の中には,満ちあふれているわけなんですよ。何気なく聞いていると心地よい言葉も,実は「毒入り饅頭・・・今なら餃子かな?」だったりするわけで,物事の本質ちゅうもんを見誤ったらえらいことになる泣きというおはなしです。
 ただ,君が困っているように,「専門的」な話になるので,これまでの経緯・歴史など背景整理が出来てないと,片手落ちの議論になってしまいます。かといって,いきなり全てを話しても君の頭がパニックになることは 今までもよくあったよね。
 だから,本当は,ちょっとおかしいんじゃないの?ってことでも,一応,自分で体験しといてもらわないと,本当に何が問題なのか分からないと思って,これまでも おかしいことも一通り目をつむって経験してもらってきたんだよね。

 まず,「森林の整備」という話の時,いつでも,森林の整備には,地拵え・植栽・下刈り・ツル切り・除伐・枝打ち・間伐・・・と大変な苦労があるという話を聞かされているよね。でも,厳密に言うと,これは商業林業のための「皆伐・一斉更新」という「人工林施業」に限ってのひとつの「体系」の話であって,決して「森林の整備」全てではないのです。
 林業の形にも,そういう体系を基本とする針葉樹のスギやヒノキ(かつて松食い虫被害が蔓延する以前はマツ,本州以北ではカラマツなど)を植林する用材生産もあれば,自然林からクヌギやコナラを伐採してシイタケ栽培の原木をとったり炭に焼いたりする広葉樹林施業というのもあるでしょ。でも,後者は,伐採した後は,植林したり下刈りしたりせんでしょ。自然更新・萌芽更新です。 モヤカキといって萌芽枝を早く間引いて株立ちを助ける施業もあるけど,大抵はほったらかしです。

 要するに,「森林の整備」は,戦前・戦中の乱伐,森林資源の枯渇を受けて,木材需要が逼迫していた時代背景のもと,植林(針葉樹用材林造成)が大きな「社会問題」であったから,子どもの教科書に「人工林の整備」=「森林の整備」として記載され,国民に「植林=絶対 善」として教育・普及されてきたのです。

 大学の農学部・林学教育も,実学として人工林整備技術,収穫最多の方法論などが教育の中核をなしていました。1960年代に,京都大学に四手井綱英先生がそれまでの「造林学講座」を「森林生態学講座」に改組してから,その門下生が各地方大学で先生の教えを広めていったおかげで,最近は,少しは森林そのものを扱う教育に変わってきましたが,かつては,「マツ・スギ・ヒノキ・ザツ」教育が太宗でした。
 即ち,林学というものは「森林学」ではなく,人間に「有用」かどうかが樹木・森林の価値であって,役にたたないものは「ザツ」という十把ひとからげであったのです。ブナがそうでしょう。ブナは,漢字で「橅」という字で「木で無い」という扱いだったのです。
 確かに,山村社会の経済的発展を考えたときに,林業という産業を生業として生かしていくことは,日本が一方で工業化社会を突き進み,所得倍増計画を達成して経済的豊かさを獲得してきた昭和の時代を振り返ると,国土の均衡ある発展を企画する国家政策としては,「林業振興」や農業振興は大きな課題であったのは間違いないことだと思います。
 しかし,現実には,戦後,敗戦と共に大量に発生した引き揚げ者による雇用対策の場として機能した「植林」「農地開墾」などの仕事は,日本の自然環境・地形的特質から機械化や大規模化がかなわず,平行して工業地帯や都市形成の安価な労働力として,農山村から優秀な若年人口を流出させる政策をとってきた結果が現在ではないでしょうか?

 (つづく)


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この記事へのコメント
ありがとうございます。

なんちゅーか、今私が抱えている問題は「森林の問題点」「NPO経営」「香川県との関係」「県民参加の森づくり」・・・・などなど、森と同じで「多機能」なんですよ。

そんでもって、ちょっとおえらい肩書きをいただいたもので、会の『カオ』として、あんまし変なこといえんしなぁぁぁっというのもあります。

ただ、ちょっと自慢なのは、ここを読んでちゃんと理解できるだけの、『読解力』がついたということでしょうか。

ほんの50年前に一生懸命植林をするのが「正」とだったのですから、今「間伐」をしようとしていることが、もしかして50年後は「誤」となる可能性もあるよなー・・・と、ぼんやり思っています。
もしかして、林道をつけることも、50年後は、「悪」となっているかも・・・・

自然との対話というのはむずかしいです。

たとえば、殺虫剤なんていうのは、人間が作ったのものだと思うのですが、結局はこれが人間を滅ぼすとなりえない。
Posted by ももいろどんぐり at 2008年02月09日 19:14
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